今週になって梅雨が本格化して連日雨続きであった。週末もどこにも出かけられず、非常に欲求不満状態だったところ、天気予報が「明日、21日は珍しくか梅雨の中休みとなり全国的に晴れるでしょう。」と告げていた。これを逃すわけにはいかない。早速日曜の夕方に出発する事にした。会社への休暇届は月曜の朝電話するように家内に頼んでおく。目的地は前々から行きたかった巻機山である。6月の半ば過ぎ、すでに残雪期は終わっていると判断してのことである。 六日町で夕食にトンカツを食べ、満腹状態で車を走らせる。標識に従って291号線を清水に向かった。いくつかの集落を過ぎて山間部に入っていくと、やがて左巻機山の標識が見えてきたので左折し、清水の部落に入って、高度を稼ぐ。暗い中細い道を巻機山の標識を頼りに行くと、やがて桜坂の駐車場へと着くことができた。駐車場には3台の車が駐車していた。 天気は思いの外、回復が遅く、夕方からずっと小雨が続いている。天気を気に懸けながら就寝。5時00分起床予定。 4時を過ぎるともううっすらく明るくなっている。雨足は昨夜にも増して強い。天気予報を聞いていなければ登山断念という状況だ。何台か車も増え、また送られてきた人もいて、早々と登山口を後にしていく。寝る前に入手しておいた登山者カードと案内図を元に、コース選択に頭を悩ます。当初の計画は雨で変更せざるを得ない。結局沢を出来るだけ避けるということで、登りは避難道から割引沢から天狗尾根、下りは無難に井戸尾根とした。夜中に着いたので、沢にどの程度の雪があるか見ていなかった。これがこの後の貴重な体験へと繋がっていく。 いよいよ出発という時に、2人連れの夫婦と見られる登山者が下山してきた。まだ5時45分である。夜中に下山してきたとも思われないので不思議な気がしたが、この疑問は登山者カードのポストで解明された。「雨天の為登山中止」と書かれていた。それほど雨脚は強かった。でも「新潟、群馬に降っている雨も昼前には上がるでしょう」という心強い天気予報の言葉だけを頼りに5時50分、出発する。 駐車場の端から登山道へ入ると、すぐに道は井戸尾根コースとヌクビ沢・割引沢のコースに分かれた。道は、休耕田のような場所や建物の脇を通り、樹林帯に入っていく。沢への道と避難道の分岐がなかなかこないのでてっきり分岐を見逃したと思っていたら、ようやく白い標識が現れた。この天候では沢を行くのは水量が多く危険との判断で迷わず避難道を行く。その内に、左手に割引沢が見えてきた。何と白い帯状に全体が雪渓である。尾根歩きを想定してアイゼンを置いてきた事に一抹の不安を覚える。ともかくもヌクビ沢の出会いまでは行く事にする。場合によってはそこで引き返さなければならないかもしれない。出会いの手前で小休止をしたが、6時50分に出会いに着く。予想した割引沢とヌクビ沢の分岐がよく分からず、多分少し上にあるのだろうと思い、そのままヌクビ沢に入ってしまう。気がついた時点で地図を見直したが、割引沢の方が急な沢に見えたので、そのままヌクビ沢を進む事に変更する。ただ完全な雪渓であり、どこで進めなくなるか見当がつかない。この季節、沢はまだ登る季節ではないということがようやく分かった。その割には、どのガイドブックにも沢のコースの適期が明記されていないのはどうしてだ。 いずれにして油断はできない。一歩足をすべらせれば事故も必死だ。一番困難だったのは行者の滝の右手の岩に取付くところであった。そこは雪渓が岩から離れていて幅70cm程度、深さ2m近くの亀裂となっていた。幸い雪が硬く、端から足を伸ばして岩に渡れ、そこに取り付けられていた鎖を頼りに登る事が出来た。でもこの逆の方法では下れない。もし登山を断念して引き返す時はどしたらよいのか、別のルートを探さなければと思った。 行者の滝の上部は暫く水の流れる沢を進む。雨で水量も多く、滑りやすいので慎重を期す。これに比べればアイゼン無しの雪渓の様が楽であった。雪渓と左右の尾根へのルートを繰り返し、高度を上げる。雪崩の後と思えるものが2、3個所あった。傾斜が急に成るにつれ、滑らない様に一歩一歩場所を選んで歩をすすめる。7時40分頃から雨があがり、時々青空も覗いてきた。しかし沢は雪の冷気でガスが発生していてなかなか視界が開けない。 高度計が1750mを指し、稜線までもうすぐという地点で沢が2回に渡って分岐していた。ペンキの標識は見つからない。地図を頼りに右の沢を進んでみたが、雪渓の終わりから上に進めなくなってしまった。やむなく元の地点に戻り、中央の最も広い沢を行く。高度計はもう稜線がすぐだと示しているのに、ガスがあって見通せない。再度右の小沢に寄り道をしたあと、真ん中の沢を少しつめた時、ふと見ると右の岩場にペンキの印を見つける。本当にほっとした。約20分ほどロスした。地図上のルートは何度見直してみても間違っているとしか思えない。ほっとしたついでに疲労も感じ、尾根上で小休止。このころから天気はぐんぐん好転してくる。尾根道は予想した通り短くすぐに稜線上の分岐に着く(9時38分)。上からガスのなくなった沢筋を見下ろすと、視界さえよければ、沢から尾根道が簡単に発見でき、迷う心配がないことがわかった。やはり視界が利かないという事が如何に危険なことか再認識した。 分岐から割引岳山頂まで地図では10分とあったが、6−7分で着いてしまった。素晴らしい展望である。一等三角点に相応しい。25分の休憩ですっかり雨具を脱ぎ、身軽になる。ところが巻機山へのルートの木道が途中から雪渓に埋もれてしまっている。強い日差しに雪も結構緩んできて、歩き難くなっている。傾斜も決して緩くはない。慎重に木道の反対側までいったが、余分な筋肉を使うので思いの外疲れる。御機屋に着くと朝、駐車場を先発していった二人連れと一緒になった。ここからはニセ巻機山(前巻機)とその手前に避難小屋を見ることができる。御機屋にはどういうわけか巻機山の標識が設置されており、ここは御機屋であると地図上では認識していたので不思議な気がした。 以下、しばらくお待ち下さい。 三角点記録:割引岳−1等三角点割引山 牛ヶ岳−3等三角点牛ケ岳 |
上記登山のデータ | 登山日:1999.6.21 | 天候:雨後晴 | 単独行 | 前日、車中泊、日帰り |
登山路:桜坂駐車場5:50−避難道−6:50ヌクビ沢出会い−ヌクビ沢−9:19尾根取付き−9:38分岐9:41−9:48割引岳10:13−10:50御機屋−11:00巻機山11:10−11:20牛ヶ岳−11:50御機屋12:00−12:26前巻機山(九合目)−12:35八合目−12:56七合目−13:18六合目−13:42五合目13:50−14:04四合目−14:14三合目−14:25桜坂駐車場 | ||||
交通往路:(前日)溝の口15:20−環八−大泉IC16:18−関越道−月夜野IC17:50−R17−六日町−R291−桜坂駐車場(車中泊) | ||||
交通復路:桜坂駐車場15:15−R291−R17−月夜野IC−関越道−大泉IC−環八−17:10溝の口17:55 |